気づけば毎日1,000m。工具置き場の定位置化でムダ移動をなくした事例

私たち協和プレス工業は、和歌山で板金加工を手がける製造業です。そのなかの曲げ工程では、作業の確認や記録、製品の照合のために、タブレットとバーコードリーダーを使っています。

ところが、その置き場が作業する場所から離れていました。使うたびに取りに行き、終わったら戻しに行く。1回ずつは数分の話です。けれど、一人あたりではわずかな移動でも、複数の作業者が毎日くり返すことで、合計すると1日あたり約1,064m、約11.36分の移動時間になっていました。

「端末や道具の置き場が、使う場所から離れている」。これは、多くの製造現場にある光景だと思います。私たちもそうでした。今回は、その「歩くだけ」のムダを定位置化で大きく減らした事例をご紹介します。(数値は2026年6月時点)

「歩くだけ」のムダに、どう気づいたか

このムダは、毎週おこなっている改善会議のなかで見つかりました。「ここ、ムダなんじゃないか」という声が挙がり、確かめるために実際に移動距離を測ってみたのです。そこから、かかっているおおよその時間を割り出しました。その結果が、1日1,064m・約11.36分でした。

タブレットとバーコードリーダーを取りに行くためだけに、いつの間にかこれだけの時間を使っていた。毎日繰り返していると、それが当たり前の景色になって、ムダだとは気づきにくくなります。感覚や思い込みではなく、いちど数字で測ってみる。見えないムダに気づけるかどうか。そこが、改善のいちばん難しいところであり、入り口でもあると思っています。

工具置き場の最適化と専用ケースの設置

やったことは、実際にはとてもシンプルです。
作業エリアの中に、タブレットとバーコードリーダーの置き場を新たにつくりました。
「離れた場所に戻しに行く」のをやめて、「使う場所のすぐそばに置く」に変える。遠くまで取りに行く必要がなくなれば、その分の移動は生まれません。

じつは、この置き場そのものも既製品ではありません。私たち自身で設計・製作したもので、タブレットを縦に並べて充電できるようにしたり、充電ケーブルやコンセントまわりの配線をすっきりまとめたりと、細かな工夫を重ねています。
このケースづくり自体もひとつの改善事例なので、また別の記事であらためてご紹介します。今回は「置き場を、使う場所のすぐそばに移す」という点にしぼってお話しします。

あわせて、軍手などよく使う道具の置き場も、同じ場所にまとめました。狙いは定位置化です。置き場を「使う場所」に固定すると、誰がやっても同じところに戻すようになります。慣れたベテランも、入ったばかりの人も、迷わず同じ動きになる。

以前は、戻すのが面倒で置き場に戻されないこともありました。定位置化は、こうした「戻し忘れ」も起きにくくします。注意力や習慣に頼るのではなく、置き場という仕組みで整う。結果として、職場の2S(整理・整頓)も自然に進みました。

改善の様子(Before / After)

Before(改善前):タブレットとバーコードリーダーの置き場は決まっていましたが、作業する場所(工場2階)から使う現場(工場1階)までの距離が長く、取りに行く・戻しに行く移動が積み重なっていました。戻すのが面倒で、置き場に戻されないこともありました。

After(改善後):使う場所のすぐそばに、「タブレット充電置き場」「スキャナー充電置き場」と表示した定位置を設けました。使うときは作業現場のすぐ近くにあり、遠くまで取りに行く移動が大きく減りました。

どれだけ変わったか

  • 移動距離:1日1,064m → 193.2m(約82%の短縮)
  • 移動時間:11.36分 → 2.03分(1日あたり9.33分の短縮)
  • 削減できた金額:年間 約13万円

金額の算出方法は、以下の通り。
1台あたり短くなった移動時間を、曲げ機15台・1年分(月20日×12か月)で積み上げると、年間で約37時間。そこに人件費(1時間あたり約3,500円で想定)をかけると、約13万円になります。
「たかが数分」に見える移動も、機械15台・作業者全員が毎日くり返せば、これだけの作業時間になります。

遠くまで歩いて取りに行っていた道具が、使う場所のすぐそばにある状態になりました。始業・終業のたびに発生していた「歩くだけの時間」の大半が、なくなっています。現場からは、こんな声が出ています。

長距離の移動がなくなって、楽になりました。取り出しもしやすくなって、職場が整理整頓されてきれいになりました。

自社で取り入れるときのポイント

  • どんな現場に向いていますか?
    作業に使う道具や端末の置き場が、使う場所から離れている現場。曲げ・溶接・組立など、決まった場所で作業する工程に向いています。
  • 自社でもできますか?
    できます。やること自体は2S、5Sの基本である「置き場を、使う場所のすぐそばに移す」だけです。それをひたすら徹底していきます。
    うまくいくかどうかは、いくつかの勘どころで決まります。実際に作業する人の動きを見て、立ち位置や手の届く範囲に合わせて高さ・置き方を決めること。よく使う道具はまとめ、戻す場所をひと目で分かるように表示すること。そして一度で完璧を狙わず、置いてみて使いにくければ動かす、を何度か繰り返すこと。この3つを押さえれば、現場の人だけでも十分に形にできます。
  • 似た現場に応用できますか?
    「道具を探す・取りに行く・戻し忘れる」が起きている場所なら、工程を問わず応用できます。

タネハナについて

タネハナは、製造現場の「ここ、ムダかもしれない」という気づき(タネ)を拾い上げ、現場に合った改善アイテムや仕組みとして形にし、生産性の向上という成果(ハナ)につなげる改善支援サービスです。
和歌山で板金加工を手がける協和プレス工業株式会社が、自社の現場で続けてきた改善を、社外の現場にも届けるために立ち上げました。

私たち自身が製造の現場を持ち、毎日のように「ここがムダではないか」を見つけ、形にしてきました。
社内の改善提案は、年間9,600件以上。その積み重ねで身についた「気づく力」と、台車・棚・治具を自社で設計・製作・据え付けまで行う「形にする力」の両方を活かせることが、タネハナの特徴です。

現場の状況に合わせて、3つの関わり方をご用意しています。

  • 改善アイテム提案(セミオーダー):置き場・工具置き、台車や棚など、現場に合わせたサイズ・仕様のアイテムを設計・製作します。「既製品では合わない」を解決します。
  • 改善伴走支援(フルオーダー):課題の把握から要因の分析、改善案づくりまで一緒に進めます。社員教育も含めて、「改善が続く文化」の定着までご支援します。
  • DX対応アイテム開発:タブレットスタンドやモニターアーム、デジタルサイネージスタンドなど、現場のDX化に合わせた製品を開発します。

「現場の気づきを、価値ある改善へ」。まずは、御社の現場で気になっているお困りごとをお聞かせください。一緒に「タネ」を見つけるところから始めます。